二郎さんの思い出

八幡店を設立するにあたり
家具屋でサラリーマンをしていた弟を
谷津店の店長にしようと考えました

半ば強引なのは長男のなせる業…早速退社してもらい(笑)
友人のフレンチのお店に修行に出てもらいました

昔から病弱、無口で引っ込み思案
しかし心の純粋さは珈琲の味に表れ、業界仲間でも評判の美味しさでした

そんなある日
普段けして泣き言を言わない強情者が
「兄貴、調子が悪いんだ、病院に行かせてくれ」
「おまえ、ふざけるな!年末の忙しい時になに考えてる!
2日我慢しろ!シフトを整えるから」
まったく鬼です……

弟は、三が日が明けて病院に歩いてゆきました
すると病院から呼び出しの電話です、入院であること、私に来院する事
着替えなど持参し、半信半疑で医者の元へ出かけました
「お兄さん、肺ガンです、余命は2週間」そう告げられました
見せられたレントゲンは真っ白で肺の痕跡がうっすらと…

「は?」

「兄貴、悪いなーシフト大変だろ・・・」

あっさり2週間で逝きました
看護師長さんから最後にこう告げられました
「立派でした、本人は大変な苦しみのはずなのに、
痛いの・い・もありませんでした」
「こんな患者さんは私の経験ですが、会ったことがない」

彼のアパートを片付けながら、そこを出るときの覚悟を悟りました
まったく整理されていたのです

小さいときから足手まといで、病弱で・・・
師長さんの一言は、人として、男として
超えられそうもない命題を授かった気持ちです

彼には沢山の常連さんがついていました
この場を借りて、深く御礼申し上げます